まず、ボールパイソンの繁殖に関して、最も重要なポイントからです。

特に初心者の方には重要な点ですが、繁殖を狙う親ボールには
CB個体を使うという点です。
安価で出回るFH個体を育てている飼育者も多いと思いますが、ここは是非CB個体を使って下さい。
特に♀親にはCB個体をオススメします。
これは、そのボールが生まれた環境に関す話ですが、かなり重要です。
理由は今更ですが、
FH個体とCB個体の違いを考えれば簡単です。
FH個体、つまりFarm Hatchとは、アフリカの大地に生息している野生の♀ボールパイソンを捕まえる事から始まります。
この捕獲した♀から卵を採取したり、生息地の巣穴にある卵を採取して、現地の施設で卵を管理します。
孵化に関する条件は、当然現地ですので、特別な温度管理をしなくても、潰さないように注意しておけば孵化します。
つまり、こうして誕生したFHベビーは
野生の個体に限りなく近いボールなのです。
言い方を変えると、限りなく野良犬・・・じゃない、野良蛇に近いのです。
では、野良蛇・・・もとい、野生の個体ではなぜ繁殖に不向きなのか。
それは自然のサイクル、大地のサイクルが体に染み付いているから。
いくら我々が設備投資しても、雄大なアフリカの自然を、遠く離れた日本では完全に再現などできません。
つまり、野生のボールパイソンにしてみれば、生まれ故郷と違う環境では、安心して繁殖など出来ないのです。
これは自分に置き換えて考えると簡単です。
もしあなたが、突然知らない国の人間に拉致され、異文化の地で観衆に注目されるなか、のんきに繁殖活動出来るか。
当然ですが、食べ物も言葉も違う国で、同じ人間だからという理由だけでの繁殖活動は難しいと思います。

その点、CB個体は違います。
CB個体とはCapative Breed の略で、飼育状況下で繁殖された個体です。
つまり、
親の代から人間の管理下で計画的に繁殖された個体
当然ですが、アフリカの大地は踏んだことの無いボールです。
生まれた時から人間に管理されているわけですから、人間がいて当然の環境で育ちます。
機械による温度管理にも慣れており、餌のマウスにも餌付いております。
人間に置き換えると、生まれた時から同じ環境で育った意思の疎通も可能な人間と繁殖行動をする。
ごく当たり前の行動ですね。

つまり、ボールの繁殖において、最大のポイントはCB個体を選ぶという事です。

ちなみに、飼っているボールがFH個体で、しかも♂だった場合は、まだ落ち込む必要はありません。
これは♂に限ってですが、飼育状況下でもFH個体は高確率で活躍してくれます。
しかし、♀は簡単ではありません。
交尾までは確認できても、排卵から産卵までの行動に結びつかないパターンが多いです。
もちろん例外もありますし、更に難しい完全ワイルド個体の♀が繁殖するケースもあります。
しかし、間違いなく初心者には向きません。

今から繁殖計画をたてるのでしたら、多少高額になってもCB個体、出来れば国内CB個体を導入しましょう。
高額と言っても、探せば案外お手ごろ価格で入手できる個体もいますので。

以下、我家での繁殖プロセスです。
全てのボールが同じ条件とは限りませんので、参考までに。

まず、繁殖に使用する個体のサイズです。
一般的に唱えられている「最低1kgUP説」は忘れて下さい。
写真のパステル♀は、1.4kgあります。
これは繁殖可能サイズですが、私は使いません。
私の勝手な基準ですが、♀は最低1.7kg以上、♂は最低1kg以上を目標にしています。
あくまで私の基準ですから、他のサイトとは数値が違うかも知れません。
実際は1kg近くあれば産卵も可能ですが、そのサイズだと問題が発生しやすいです。
その問題点とは「交尾はするのに産卵に至らない」という点です。
多くの♀ボールを飼育していれば、何匹かは産卵するかも知れませんが・・・。
繁殖させる以上は、母子共に健全な繁殖を目指しましょう。

もちろん雌は最低でも孵化後1年以上経過した個体を使うのが大前提です。
♂親は体格で、ある程度の繁殖可能かの見極めが出来ますが、♀親は難しいです。
出来れば孵化後、冬を2回以上越した♀個体を使うのがベストかと思われます。




ボールの繁殖は、休眠期と呼ばれる期間に行われます。
餌食いが止まる晩秋までに、使用する♂親・♀親をキッチリ仕上げましょう。

本来、繁殖に向けて計画的な温度管理や日照時間の管理が必要と言われます。
これは年間を通した総合的な管理です。
しかし、私の場合は日本の季節変化になれたCB個体を使う事で、上記二点を省きます。
検証好きな方や、こだわりのある方は、年間管理で繁殖率を上げる事も可能です。

左の写真では、スパイダー♂とノーマルCB♀を交接させています。
我家の場合、11月初旬頃から雌雄を同じケージに入れます。
ほとんどの場合、最初に♂と♀を一緒にすると、どちらも興奮して交尾体制に突入します。
♂は♀の体に沿うように移動して、自分のお尻の排泄孔付近で♀の体を擦ります。
♀は尻尾を持ち上げ、尿を撒き散らしながら移動し、排泄孔がふくらみます。
実際に交尾を確認できなくても、一週間一緒にいれて一週間離す、これを繰り返します。
産卵ギリギリまで一度も離さずに管理する人もいますので、この辺は各自で判断を。



よく「受精した♀個体は腹を上に向けている事がある」と聞きますが、これは微妙です。
確かに左の写真のように、抱卵した♀が腹を上に向けている事もありますが、♂もやります。
また、交尾させていない未成熟の♀も同じ行動をとる事があります。
なので、腹を上に向けているから妊娠及び排卵していると判断するのは危険です。

本来、ボールは交尾前の排卵期に腹を上に向けます。
交尾が成功し、受精すると、逆に腹を温める行動に移るのです。
もし♀のお腹に卵がある場合、見た目で異常に膨らむので判断できると思います。
その時点で腹が上を向こうが下を向こうが、管理者は既に把握しているはずです。

しかし、中には単なる肥満状態の♀もいますので、普段の動向を詳細に観察しましょう。




数回に渡る交接を繰り返し、無事♀の体内で受精すれば、翌年の5月頃には卵を産みます。
これらの期間に卵胞が排出され、胚子の発育が進み卵殻が形成されます。
難しい話が多いので、興味のある方は大御所のBp・Supply さんのHPで勉強して下さい。
Bp・Supply さんのTOP→DataRoom→ケアシートの順で進むと閲覧できます。

まぁ、そちらを閲覧した時点で、このページを見る必要はなくなるワケですがね。




産卵後は、速やかに親から卵を取り上げます。
これは、何も♀親にイジワルする意味ではありません。
早急に繁殖の疲れから♀親を回復させるためです。
産卵直後は♀親が体全体を使って卵を守っています。
うかつに手を出すと、日頃餌をもらっている恩など忘れて飛び掛ってきます。
それを回避しつつ、卵だけを孵化器に移します。
孵化器のスペックは31℃で湿度90%以上をキープして下さい。

卵を取り上げた♀親は、速やかに全身をぬるま湯で洗い流し、産卵したケージも丸洗いです。
これは、産卵した痕跡(特に匂い)を完璧に消す為です。
匂いが消えると、順調にいけば1週間以内に♀親は餌を食べ始めます。
この時、凄まじい勢いで餌を食べ、産卵で消耗した体力を急速に取り戻します。
(追記)
洗わなくても食べ始める個体もいるそうです。
洗って個体にストレスを掛けるのも問題ですので、そこらへんは各自判断して下さい。
(追記)
丸2年ぶりの更新ですが、メールで以下の問い合わせが異常に多いので追記しておきます。
『孵卵ケースの中には何を敷けばいいのか教えろ』との質問。
いや、上記の文章が大げさなのではなく、本当にこのままの文章でくるんですよ。
いくらHPの雰囲気が全体的に軽いからって、質問ぐらいは普通に聞いてくれてもいいですよ。
じゃないと私もスネてHPの更新を滞らせますからねっ!(←これが書きたかった)
(追記)
えっと、孵卵ケースの中ですが、私はパーライト(14g380円)だけ敷いています。
人によっては、これ以外にもバーミキュライトやミズゴケを使う人もいます。
パーライトも、こだわる人は上位品質のビーナスライトを使ったりします。
しかし、基本的にはある程度の湿度が保てて、そこそこ清潔な雰囲気なら何でもOKです。
自然界のボールは、赤土に作った小動物の巣穴や、汚い蟻塚の穴を利用して産卵します。
それほど神経質にならなくても、乾燥していなければ意外と大丈夫ですよ。
この段階で卵がシワシワになり失敗する人の多くは、乾燥し過ぎの状態です。
過湿を恐れるよりも、極度の乾燥の方が数倍危険だと認識して下さい。
(追記)
100均で売っている保水剤をパーライトに混ぜれば、某ハッチラ○ト風の産卵床を作れます。
これは数年前から海外フォーラム等で話題になっていましたが、最近急に某巨大掲示板で騒がれました。
まぁチャレンジすることは止めませんが、そもそもパーライト単体で孵化させられるので、不要な努力かと。
ミズゴケを使ったり、ビーナスライトを使うのも全く意味が無いとは言いませんが、どうなんですかね?
時間と費用を掛けて「ココまで手を掛けたんだから大丈夫なはず」というメンタルな意味では効果絶大ですが(笑)
(追記)
二番目にメールでの質問が多いのが「餌はラットとマウスどちらが良いのか」って内容です。
正直に書きますと、私にも分かりません。
どちらもメリット・デメリットがありますが、飼育者が好きなほうを選べば良いかと。
私は100%冷凍マウスです。
あまり大胆に書くわけにはいかない大人の事情もありますが、100%冷凍マウスです。
ちなみに2010年7月5日現在、左の写真の卵を7個産んだ個体も、ここ数年100%冷凍マウスのみの飼育です。
飼育者の中には栄養価やg当たりのコストパフォーマンスを気にする方が多く見られますが、メンタルな意味で(略)



(追記)
上記の100%冷凍マウス飼育ですが、「たまたま当たりの♀個体だったんじゃねーの?」と言われそうですね。
なので参考までに載せますが、上記とは別の♀から産まれた卵は1個131gありました。
この卵ですが、それ以外は発見した際に既に複数個が固着していたので、単独で計測できたのは1個だけです。
もちろんこの卵を産んだ♀親も100%冷凍マウス飼育です。

誤解されませんように書きますが、ラットが無駄だと書きたいわけではありません。
ラットも使い方によってはマウス以上に魅力的な餌です。
我が家では、マウスで十分満足な結果を出しているので、それを常用しているだけです。
そこらへんは各自でよく考えて与えて下さい。
尚、「自家繁殖のラットだけど試しに使ってみろ」という方は、常時プレゼント募集しておりますので連絡下さい。



ちなみに、左の写真は未熟な卵(スラッグ)の例です。
原因は様々ですが、ありがちなのは抱卵期の温度管理ミスです。
また、親個体が未成熟だった場合も同じくスラッグを産みます。
4つのうち、左から2番目の卵が大きく凹んでいます。
これは湿度不足でも起こりますが、そうでない時も稀に起こります。
また、ベビーが孵化する直前にも卵は凹みますが、左の写真は産卵後4日目です。
こうなると、普通は「この卵はダメだなぁ」と思いがちですが、そんな事はありません。
左の写真の卵も、元気なベビーが誕生しました。

慌てて捨てたりしないように。
至福の瞬間です。
この瞬間の為に頑張っているワケです。

孵化は卵に切れ込みが入り、そこから鼻先を突き出す形で行われます。
最初は鼻先しか出しません。
出たり引っ込んだりしながら、徐々に出てきます。
撮影しようと近付くと、気配を察知して引っ込むため、上手く撮影するのは大変です。

しかし、中には人の気配に全く動じない個体もいます。
左の写真の個体がそうです。
試しに鼻先を触っても動じないので、逆に死んでるのかと思ったぐらいです。
孵化後の卵です。
サイズを参考にするのは無駄です。
なぜなら、この卵は異常に大きいからです。
しかも、孵化後は殻が急速に乾燥するので、左の殻も既に縮んでいます。
じゃあ載せるなって話ですが、見事な卵だったので載せてみました。
孵化後のベビーは最初の脱皮まで餌を食べません。
この最初の脱皮をファーストシェッドと呼びます。
もちろん水は飲みますので、水入れに新鮮な水を用意しましょう。

左の写真は孵化した数時間後に撮影しました。
重さを参考にするのは無駄です。
なぜなら、この卵は異常に大きいからです。
じゃあ載せるなって話ですが、見事な(以下略)
上から2枚目の写真のペアで生まれたベビー達です。
♂親にスパイダー、♀がノーマル。
♂親のスパイダーは優性遺伝なので確率的に50%はスパイダーが生まれます。

で、確率通り半分の数がスパイダーでした。
初脱ぎ前のベビーの管理は、湿度を高めに保って下さい。


上記の駄文で繁殖の感覚を掴むのは困難かと思われます。
ですが、大まかな流れは把握できるかと。
何度も書きますが、くれぐれもCB個体で立派に成熟した個体を使うのがポイントです。
ギリギリ繁殖可能サイズの親で産卵させる事は、その後のリスクを考える上で、得策とはいえません。
昔から「急がばまわれ」と言いますが、慌てて事を起こすと、ろくな結果が出ないものです。
最終的に安全な繁殖を目指す事が、飼育者にとっても親個体にとっても最高の結果が伴うのです。

条件さえ整えばボールパイソンの繁殖は想像するほど難しい事ではありません。
むしろ、簡単な部類に入ると自信を持って言い切れます。

この項では、基本的な繁殖に関する解説でしたが、ここで満足してはいけません。
普通種の繁殖の次は、モルフ(遺伝性の確立した品種)の繁殖も待っています。
メンデルの法則を参考に、劣性遺伝や優性遺伝、共優性遺伝等の繁殖をして、益々深みにはまりましょう。
大丈夫、ボールパイソンを好む人種は、神経質なヘビの扱いになれた、いわばマゾ的性格の持ち主です。
ちょっとやそっとの事でへこたれるような人は、繁殖以前に淘汰されています。

自分を信じて、至福の瞬間を共有しましょう。



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